新規事業開発への取組み―ふくしま総合災害対応訓練機構との連携・支援活動

実用化開発事業の支援

当センターでは、新規事業開発への取組方針の基に、昨年度から(一財)日本総合研究所との協力により、(一社)ふくしま総合災害対応訓練機構(以下、ふくしま機構と表記)が福島県の補助事業として実施する「ロボットを災害現場でタイムラインに沿ってシームレスに運用するための実用化開発事業」の円滑な取組みを支援中です。

本事業は、全国の消防本部・消防署への災害対応ロボット・システムの販売(災害対応ロボットの社会実装)を目的に、「隊列飛行システムを基盤技術とした複数ロボットを災害現場でタイムラインに沿ってシームレスに運用するためのシステム及び機器の開発」を行う計画です。

災害等が頻発するわが国では、消防活動の重要性と領域、頻度がますます拡大する一方で、必要な人材、予算などの制約もあり、総務省消防庁では、2018年に「消防防災分野における無人航空機の活用の手引き」、さらに「消防防災科学技術高度化戦略プラン」を公表し、AIやロボット等の先端技術の活用等に重点を置く方針が示されています。特に、戦略プランでは、先端技術の活用等に向けて、①利用環境を想定した対応がとられていないこと、②消防活動での活用シーンに適合していないこと、③生活シーンや購入シーンが想定されていないこと、④導入効果、費用対効果が明確でないこと、の4項目が挙げられています。

当センターが支援するふくしま機構の実用化開発事業におけるシステム及び機器の開発においては、4項目の中でも①及び④を重視した取組みを行っています。

実用化開発事業の全体像

災害対応に求められる機能は、発災からの時間経過(タイムライン)により順次変化(情報収集をはじめ物資輸送・負傷者搬送等)していくことへの対応です。本事業では、タイムラインに対応できるよう開発を3分割し、3年間(2022年度まで)の計画で開発を進めています。3分割は、実用化開発1として、隊列飛行システムの拡張①(主にスペックの異なるドローンを隊列飛行させるためのシステムの開発)、実用化開発2として、UGV(無人走行車両)の多用途活用用アタッチメントの開発(主に危険物質検知器搭載、物質運搬用荷台、負傷者搬送用ストレッチャーの仕様・規格・製品開発)、実用化開発3として、隊列飛行システムの拡張②(主に隊列飛行システムをUGVに応用するシステムの開発)で構成します。

1年目の成果(3分割毎に2機種に対応するシステム開発、仕様・製品開発、UGVの隊列走行システム開発(2台用))を踏まえ、本年度(2年目)では、3分割の実用化開発の実証化に加え、「隊列走行システムにビーコン等を用いたUGV先導システムを追加するための開発」を行うことを計画しています。

実証実験の様子

本年1月早々、2年目の実用化開発の実証化に向けた実験がふくしま機構及び連携先(東日本計算センター(いわき市)、会津大学等)の関係者により、福島ロボットテストフィールド(RTF)で2週間にわたって実施されました。

第1週目は、悪天候(強風等)のためドローンの飛行は見合わせ、RTFの「瓦礫・土砂崩落フィールド」にて、人追従型のUGVの隊列走行実験が行われ、救援物資や負傷者の搬送などを今後行うことが確認できました。第2週目は、RTFの「市街地フィールド」にて、ドローンの隊列飛行を中心に実施し、スペックの異なる複数台のドローンの隊列飛行による被災状況の広域把握(空撮及び画像処理)のための技術的検証等が行われました。

実験の様子及び開発機器(試作版)は、写真1、2、3、4を要参照。

写真1

写真2

写真3

写真4

本実験を通じて得られた技術的知見や導入効果等(搬送能力の向上、人的費用の削減と救助活動効率の向上、単位時間当たり救助活動取組量の増加、ドローン産業の拡大促進など)を、今年度の成果としてとりまとめ、次年度の実用化に資する開発に活かす方針です。

ふくしま機構の実用化開発事業は、地元の中小企業等で構成される「南相馬ロボット産業協議会」との連携も視野に進められており、災害対応ロボットの実装を促進し、福島県浜通り地域のロボット産業の振興を通じて、地域経済の発展にも寄与することを企図しています。

以上から、当センターとしてもふくしま機構との連携促進と新規事業開発への取組みの観点から、本実用化開発事業の支援を通して、センターの活動を拡充することは事業計画に照らしても有用なものと捉えています。

 

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