理事長メッセージ(2022年 年頭所感)

謹んで新年のお喜びを申し上げます。コロナ禍を乗り越えて、本年が皆様にとりまして幸多き年となりますよう祈念いたしますとともに、当センターを引き続きご厚誼いただきたくよろしくお願い申し上げます。

当センターでは、来年(2023年3月)の設立50周年を見据えて、経営安定化に資する観点から、令和2年度事業計画において3年計画で取組む新たな基幹事業の創出に向けた活動を引き続き展開するため、社会的投資及び支援活動により重点をおく考えです。

具体的には、東日本大震災発生から10年が過ぎるとともに、現下のコロナ禍や災害が頻発するわが国において、福島の復興、防災立国日本の実現、危機管理能力の高い日本人の育成による安全で安心な国土と社会開発に資する取組みに注力する組織「(一社)ふくしま総合災害対応訓練機構」の社会的かつ公益的事業に参画し、2023年度には当センターの社会的基幹事業として定着するよう推進する計画です。

このため、2020年6月、その一環として福島ロボットテストフィールド(南相馬市)を最大限活用し、福島県地域復興実用化開発等促進公募事業として同機構が提案した「ロボットを災害現場でタイムラインに沿ってシームレスに運用するためのシステム開発」事業(2022年度まで)が採択され、当センターの支援のもとに関係自治体、大学、企業等が参画するコンソーシアム(体制)が組まれ、2023年度からの基幹事業創生に資する投資支援活動等が具現化しつつあります。

本事業は、わが国でも稀な人間とロボットの協調・協働型災害対応システムの運用による、ソフト面での防災力向上への寄与が期待され、災害現場での利用環境を想定した運用蓄積に伴い、主に全国の消防本部・消防署等における実装・導入および海外(特にアジア)への汎用も見込むものです。本事業の成果は、防災をはじめとする関連産業等の市場拡大による福島県浜通り地域の復興、さらに地域経済の発展にもつながり、当センターの事業活動(新規事業開発に資する投資支援等)でも成果が見込まれ、将来の安定的な組織運営にも寄与するものと考えています。

これまでに多くの皆様に「植物工場」をはじめ関連する調査研究事業でご支援・ご協力をいただきましたことに改めて感謝しますとともに、本年以降も一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げる次第です。

新規事業開発への取組み―ふくしま総合災害対応訓練機構との連携・支援活動

実用化開発事業の支援

当センターでは、新規事業開発への取組方針の基に、昨年度から(一財)日本総合研究所との協力により、(一社)ふくしま総合災害対応訓練機構(以下、ふくしま機構と表記)が福島県の補助事業として実施する「ロボットを災害現場でタイムラインに沿ってシームレスに運用するための実用化開発事業」の円滑な取組みを支援中です。

本事業は、全国の消防本部・消防署への災害対応ロボット・システムの販売(災害対応ロボットの社会実装)を目的に、「隊列飛行システムを基盤技術とした複数ロボットを災害現場でタイムラインに沿ってシームレスに運用するためのシステム及び機器の開発」を行う計画です。

災害等が頻発するわが国では、消防活動の重要性と領域、頻度がますます拡大する一方で、必要な人材、予算などの制約もあり、総務省消防庁では、2018年に「消防防災分野における無人航空機の活用の手引き」、さらに「消防防災科学技術高度化戦略プラン」を公表し、AIやロボット等の先端技術の活用等に重点を置く方針が示されています。特に、戦略プランでは、先端技術の活用等に向けて、①利用環境を想定した対応がとられていないこと、②消防活動での活用シーンに適合していないこと、③生活シーンや購入シーンが想定されていないこと、④導入効果、費用対効果が明確でないこと、の4項目が挙げられています。

当センターが支援するふくしま機構の実用化開発事業におけるシステム及び機器の開発においては、4項目の中でも①及び④を重視した取組みを行っています。

実用化開発事業の全体像

災害対応に求められる機能は、発災からの時間経過(タイムライン)により順次変化(情報収集をはじめ物資輸送・負傷者搬送等)していくことへの対応です。本事業では、タイムラインに対応できるよう開発を3分割し、3年間(2022年度まで)の計画で開発を進めています。3分割は、実用化開発1として、隊列飛行システムの拡張①(主にスペックの異なるドローンを隊列飛行させるためのシステムの開発)、実用化開発2として、UGV(無人走行車両)の多用途活用用アタッチメントの開発(主に危険物質検知器搭載、物質運搬用荷台、負傷者搬送用ストレッチャーの仕様・規格・製品開発)、実用化開発3として、隊列飛行システムの拡張②(主に隊列飛行システムをUGVに応用するシステムの開発)で構成します。

1年目の成果(3分割毎に2機種に対応するシステム開発、仕様・製品開発、UGVの隊列走行システム開発(2台用))を踏まえ、本年度(2年目)では、3分割の実用化開発の実証化に加え、「隊列走行システムにビーコン等を用いたUGV先導システムを追加するための開発」を行うことを計画しています。

実証実験の様子

本年1月早々、2年目の実用化開発の実証化に向けた実験がふくしま機構及び連携先(東日本計算センター(いわき市)、会津大学等)の関係者により、福島ロボットテストフィールド(RTF)で2週間にわたって実施されました。

第1週目は、悪天候(強風等)のためドローンの飛行は見合わせ、RTFの「瓦礫・土砂崩落フィールド」にて、人追従型のUGVの隊列走行実験が行われ、救援物資や負傷者の搬送などを今後行うことが確認できました。第2週目は、RTFの「市街地フィールド」にて、ドローンの隊列飛行を中心に実施し、スペックの異なる複数台のドローンの隊列飛行による被災状況の広域把握(空撮及び画像処理)のための技術的検証等が行われました。

実験の様子及び開発機器(試作版)は、写真1、2、3、4を要参照。

写真1

写真2

写真3

写真4

本実験を通じて得られた技術的知見や導入効果等(搬送能力の向上、人的費用の削減と救助活動効率の向上、単位時間当たり救助活動取組量の増加、ドローン産業の拡大促進など)を、今年度の成果としてとりまとめ、次年度の実用化に資する開発に活かす方針です。

ふくしま機構の実用化開発事業は、地元の中小企業等で構成される「南相馬ロボット産業協議会」との連携も視野に進められており、災害対応ロボットの実装を促進し、福島県浜通り地域のロボット産業の振興を通じて、地域経済の発展にも寄与することを企図しています。

以上から、当センターとしてもふくしま機構との連携促進と新規事業開発への取組みの観点から、本実用化開発事業の支援を通して、センターの活動を拡充することは事業計画に照らしても有用なものと捉えています。