ソーラーシェアリングで始める持続的な農業

(一財)社会開発研究センター理事長 松岡斉

はじめに

本著「ソーラーシェアリングで始める持続的な農業」(東光弘著・農山漁村文化協会2026年6月発行)は、脱炭素社会や持続的な農業に向けて、大きな期待が寄せられているものである。ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は、農地に太陽光パネルを設置し、農業生産と発電を両立するシステムである。その効用として、農業収入と売電収入のダブルインカムによる「農業経営の安定化」を実現、エネルギーの自給率向上と2050年ゼロエミッション達成へ寄与、地域で資金を循環させることで雇用の創出、所得向上、投資の振興などの促進が期待されている。

この本では、ソーラーシェアリングの理念と考え方、パネルや設備の基礎知識、各種届け出や関連する諸制度、農業をベースに置いたプラン立案のポイントなど、農家・農村のためのソーラーシェアリングの基本をわかりやすく解説している。田畑の上のソーラーパネルから、新しい農業と社会を創造するための貴重な一冊である。以下では、本著のポイントを紹介する。

本著の概要

(ソーラーシェアリングの理念と考え方)

ソーラーシェアリングは、名付け親であり、創始者の長島彬先生により考案された日本発の技術である。長島先生は本技術から特許料を取らずに「すべては未来の子どもたちに」をスローガンに、脱炭素・脱原子力社会への一刻も早い移行を優先し、特許を公開して誰でも無料でこの技術に参画できる形を選択した。ソーラーシェアリングは、今後さらなる拡大が見込まれるが、特許が無料で公開されていることは、この技術の基本理念の成り立ちに関わる部分であり、最初に認識しておくことが重要と強調している。 

「ソーラーシェアリング」という命名は、「太陽の光を発電と農業を含めたほかの用途とシェアする」ことに由来し、生物同士の関係性やお金も含めて、お互いに共存し合う「分かち合い」の精神により成り立つことと著者は確認している。

太陽の恵みはもともと誰のものでもなく、等しくすべての生命を育み、電気を供給するという仕事は、経済活動や社会生活の基盤となるインフラビジネスを成し、一部の誰かが利益を独占するのではなく、地域の人々に還元されていくことがとても大事との見解である。

(パネルや設備の基礎知識)

ソーラーシェアリングの設備の基本は、以下の4点である。
① 架台(支柱)
パネルを支える部分。営農に支障がないように3m以上の高さが推奨される(2026年5月現在、制度上は簡易な構造で撤去可能であること、2m以上であることが必須要件)。
② 太陽光パネル
太陽光から電気を作り出す部分。影の部分が30~35%程度ならほとんどの作物に影響はない。著者の会社では、作物への影響がより小さい細型のパネルを開発・採用している。
③ 杭(スクリュー杭)
長さ2~3m程度の杭で、設備全体の基礎となる重要な部分。風であおられて設備が浮かび上がったり、設備の重量で沈下したりするのを防ぐ。事前に地耐力(設備の重さに耐える地盤の強度)を調査し、正確に測量して垂直に打ち込むことが重要。杭と架台の接合部がもっとも壊れやすいので、十分な強度が必要になる。
④ パワーコンディショナー
太陽光で発電された直流(DC)の電気を家庭などで使われる交流(AC)の電気に変換するほか、出力を制御する装置である。

(成功させる5つのポイント)

本著では、ソーラーシェアリングを成功させるポイントについて、著者の長年の事業者としての経験から5つの視点で整理し、章ごとに最新の情報をもとにわかりやすく解説している。加えて、重要事項に関するコラムや先進的な事例を多数紹介するとともに、農地法などに係る各種申請書類や実際の事業収支計算書を含む関係資料を収録しており、これからソーラーシェアリングを通して持続的な農業を始める方々にとり、とても有用な実務書(ハンドブック)といえよう。本著における5つのポイント(内容構成)は次のとおり。
〇理念
・将来にわたりこの地域をどうしたいか、次世代にどのような環境や社会を残した
いかなどのビジョンが大前提(→第1章、第2章、第4章、第11章参照)
〇営農
・ソーラーシェアリングでは、パネルの下での健全な営農が必須。品目や栽培方法を
どうするか、作業性をどう確保するかなど、目標とする農業の形を考える(→第3
章、第4章、第5章参照)
〇設備
・発電の規模をどうするか、作物への影響はないのか、風で壊れないか、発電効率を
どうするかなどを考慮する(→第6章、第8章、第9章参照)
〇資金
・初期投資にかかるイニシャルコストから、運営に関わるランニングコスト、資金調
達の方法や返済の見通しまで、事業採算性を考える(→第10章、第12章参照)
〇電気の需要先
・電気を地産地消する「オンサイト」なのか、離れたところの需要者に供給する「オ
フサイト」なのか、発電した電気の需要先を考える(→第7章参照)

上記全体構成のうち、農業をベースに置いた「プラン立案」を、本著の要点部分として以下に紹介する。

プランを立てる(第4章)

本章から、ソーラーシェアリングで始める持続的な農業を実際に取り組むために必要な事項として、ソーラーシェアリングは様々な側面があり、全容を理解する上で4つの要素を踏まえたプランの立て方が要諦との考えである。

(基礎になる4つの要素)

1番目の要素は、「採算」である。建設費などを含めて最初に全部でいくらかかるかなどのいわゆる「イニシャルコスト」から、維持管理に関わるランニングコスト、資金調達や返済まで、お金に関することがすべて含まれる。20年間の収支計算に代表されるトータルでの「事業採算性」のことなどである。

2番目が「設備」である。どのくらいの規模で発電をやろうと考えているか、風で飛ばないのか、作物の影響はないのかなど、設備に関するあらゆることが含まれる。

3番目が「営農」である。農地の場合、健全な営農が法律上も求められるため、作業性も含めた農業の継続性が必要になる。

4番目が「理念(物語性)」である。これに関しては、将来にわたりこの地域をどうしたいのか、自分の農業経営をどうしたいのか、地球温暖化に対して次世代にどのような環境を残していきたいのかなど、正解というものはなく、百人百様でよいと考えることとする。

この4つの中では、とりわけ1番目の質問が多く、次いで2番目、3番目、4番目の順で質問が多い。また、4番目については質問が来ることは稀である。しかしながら、著者自身は、4、3、2、1の順に大切と考えており、4、3、2が整えば、自然に1は整ってくる。はっきりとした理念やビジョンをもっていることがとても重要との考えである。

(発電設備をどうするか)

発電設備のサイズは、概ね4種類に区分される。軒先タイプ(DC:直流10㎾未満程度以下)、低圧タイプ(DC50~85㎾:10~17a)、高圧タイプ(DC1.2~2.7㎿:3.4~6.5ha)、さらにそれ以上のサイズでの数十haを活用した特別高圧の設備が考えられる。それぞれのサイズごとに収支の考え方が変ってくる。
〇軒先タイプ
このタイプは、自分の家や農業施設の脇に設置する小規模なもので、基本的に自家消費が前提である。
〇低圧タイプ
このタイプは、営農を前提にした場合に一番基本となるサイズである。法人や組合などのほかに、個人の農家でも導入されているケースが多々あるパターンであり、農作物の収量に関わらず売電収入が安定して入ってくる点が魅力である。
〇高圧タイプ
このタイプは、一気にサイズが大きくなる。事業採算性を考えるとAC(直流)2,000㎾弱を選択し、低圧のAC約50㎾の40倍のサイズで、1㎾当たり10~15万円程度の建設費とそれ以外のコストも含めると7,500万円~5億円程度のプロジェクトになる。助成金を活用すれば年間数百万~数千万円単位の利益を得られることが目標である。
〇特別高圧タイプ
このタイプは、数十ha、数十億円のプロジェクトになり、地域全体で考えていくものである。

(発電量をシミュレーションする)

大まかなサイズが見えてきたら、その設備でどれくらい発電するのかを予想する。発電量を予測する際には、緯度や経度情報、特に重要な太陽光パネルの角度など、多くの要素を考慮する必要がある。

試算は、専用のシミュレーションソフト(「ラプラス」というメーカーのアプリが主流)を使い、どの向きに山があるかなどの設定もでき、かなり高い精度のシミュレーションが可能である。出てきた予想発電量に予定販売単価をかけると年間の売電収入を数値化できる。

(初期投資(イニシャルコスト)をどうするか)

安全な設備であることがとても重要であり、優良な施工実績のある業者に依頼することが肝要である。複数の見積もりを取得し、各項目が明朗な内容であるか、設備全体や太陽光パネルなど、各部品のメーカー保証の内容も確認することが必要である。

注意点は、機器や部品の値段だけでなく、性能や保証などを見極めることであり、安いつもりの機器の保証がきかなかったり、性能が悪かったりして、結果として損をしてしまうことがある。

著者も、安いという理由で購入したパワーコンディショナーで苦い経験がある。設置した機器の騒音がひどく、近隣住民の方からクレームがあり、約700万円かけて防音対策を取ったものの上手く行かず、結局2,000万円かけて交換することになった。初めて使う機器の場合、まずは小規模で確認を取ることが重要だと、高い代償を払って学ぶことになった。

(維持費用(ランニングコスト)をどうするか)

ソーラーシェアリングには、様々な経費がかかる。主なものは、①借地の場合は借地代、②自分で営農しない場合は耕作委託料、③設備にかかる固定資産税、④金融機関への借入金利、⑤損害保険料、⑥保守管理委託料などである。

このうち経費の中で上昇が続いているのが損害保険料である。電線の盗難や初期のころに作られていた野立て設備の故障が多くなり、保険の料率がとても上がっている。そのため、保険に入らずに積み立てをして対策することも考えられる。

(営農をどうするか)

上述した4つの要素の中で、営農をどうするかは、簡明にして現在もっとも難しい問題である。2025年9月に農水省が発表した農業に関する「地域計画」の策定状況によれば、「10年後には全国平均で3割以上の農地に担い手の見込みがない」ともされている。

このような日本の農業の担い手に関する現状がある中、ソーラーシェアリングの将来に関しても、どのように担い手を確保していくのか、どのような農業とパートナーシップを組んでいくのかが、もっとも重要な課題である。

著者自身も、2026年に千葉県内の市町村で新しい農業法人を立ち上げて、新たな地域おこしをゼロから開始するとの方針のもと、20歳代前半の若者を代表者にして大胆に新しい内容で若者が集う農業を計画中である。失敗を重ねながら、きっと新しい農業の方法に関してたくさんの発見があるとの考えである。

今後に向けて

農水省は本年11月、企業がコメや野菜を生産するために借用可能な農地を検索するシステムの運用を始める(日本経済新聞2026.8.16記事)。自治体が持つ農地情報を企業がまとめて入手できるように整備して、農業参入を後押しするとの取り組みである。農業者の高齢化は進み、食料供給の基盤維持には、企業を含む新たな担い手の増加が欠かせない。

検索システムでは、農地の集積度合いや将来的な拡張の可能性に加えて、高速道路のインターチェンジや鉄道駅へのアクセス、スマート農業に取り組む上で必要となる電力や通信状況も確認できるようになり、農地が探しやすく、企業の農業参入を促進する有用なシステムになることを期待する。

<参考文献>
「ソーラーシェアリングで始める持続的な農業」(東光弘著・農山漁村文化協会2026年6月発行)

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